[ 2007/11/23 19:01 ]
プロローグ
その日、1人の開発員が謎の死を遂げた…彼の傍らには未公開神姫のデザインスケッチが何10枚と散らかっていた…そして、次の日は彼も開発スタッフとして関わった2体の神姫が新発売になる日であった…
早朝、3時半…
高橋 勝は今日もこんな朝っぱらから学校に向かっていた。朝早い方が神姫バトルをするにも有利だからだ。時間的な理由もある。元々低血圧の勝は神姫バトルのためだけに早起きするようになったのだ。バトルを終えてから受ける授業には不思議と身が入る。神姫バトルを始めてから勝の成績はめきめきと上がっていったのである。
早起きするのにはもう一つ理由がある。
勝は母子家庭であり、寝坊すると誰にも起こして貰えないのだった。母親の木葉は殆ど休みも取らないで朝4時にはアルバイトに出てしまう。おかげで勝が朝の3時に学校に向かうのが日課となってしまっている。学校での夜間の立ち入りは神姫を持っていれば許可されるので今や勝はすっかり朝の神姫バトルの常連参加者になってた。
彼の神姫は最初期型の機体であるアーンヴァルだ。だが、このアーンは一般に売られている通常型の量産アーンとは違う。勝の父は神姫開発スタッフでこのアーンの開発をしていた研究員の1人だった。しかし、アーンとストラーフの発売を控えたほぼ1月前、謎の死を遂げていた。原因は不明で、研究所の関係者も理由は不明だという。自殺のようでもあったが、研究員全員からは評判が良かったのでそんな事はあり得なかった。病死か?他殺か?今以てその死因は判っていない…
そしてその1ヶ月後、形見となるアーンとストラが勝の元に送られてきたのであった。勝が神姫バトルを始めた原因も実はそこにある。勝は父の死の真相を知りたいと思っているのだった。
最初期型の機体でありながらアーンは人気が高く、一般販売分は実に多くのマスターが所有している。しかし、勝の神姫は実はどれも販売分とはスペックの設定が明らかに違っている。だが勝はそれを敢えて隠して一般販売分と同じスペックに落として使用している。
ただし、サンプリングされている声優の音声は明らかに一般販売分とは異なり、勝のアーンの方が若干目だがトーンが高めだ。このプロトタイプのアーンが何故、勝の元に送られてきたのか…その理由が知りたくて勝は神姫バトルに没頭するようになった。
その潜在能力の高さのせいか、はたまた勝個人の腕が上がってきたせいか、今では続々登場する新型にも引けを取らない戦力となり、勝のアーン自体も「伝説のプロトプロット」とまで呼び慣わされている…
つづく...